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お父さんやお母さんが認知症になったらどうする?

2017.01.20

大ちゃん先生こと、高橋 大貴です。「家族信託」の活用例の紹介をいたします。

相続や信託のご相談は、十人十色、ご家族によってご事情はさまざまです。よって、その対策も一つとして同じにはなりません。皆さまにはその「具体例」を、一つでも多く発信していきたいと思っています。

 

ご自宅が、ほぼ唯一の財産のケース

「うちには財産はそんなにないから・・・」

ご相談の方は、まず第一声、枕詞のようにこのセリフを述べられます。

では、財産が少ない人は、問題が起きないのでしょうか? 答えは「NO」です。

たしかに、遺産が少ない場合は、「相続税」の問題は起きません。しかし「遺産分割」の問題や「認知症」の問題は、財産が多い少ないとは、あまり関係ないのです。

たとえば、ご高齢のご夫婦がいたとします。お母さんは専業主婦で、財産はお父さん名義の自宅(土地・建物)と、少しの預貯金のみ。ご自宅が、ほぼ唯一の財産です。

お子さんはおられますが、同居はしていません。ですので、いずれは老人ホームや介護施設に入ることを検討しています。しかし、預貯金はそれほどありませんので、その際は自宅を売るしかありません。

 

【お父さんが、もし認知症になってしまった場合】

お父さんが認知症を発症して判断能力に問題が生じるようになってしまったら、自宅を売却することができなくなります。自宅を売却するためには、家庭裁判所に法定後見人を立てる申立てをし、後見人が選任された後、さらに居住用財産の売却について家庭裁判所の許可をとる必要があります。多くの場合、後見人の申立てから法定後見の開始までの期間は、4カ月以内となっています。また判断能力の有無について医師の鑑定が必要ですので、鑑定の費用もかかります(10万円前後が多い)。

また、後見人は身内の人間がなれるとは限りません。家庭裁判所の判断によって、司法書士などの専門家が選任されることが多くなっています。家族が後見人に選任されるケースは全体の約3割程度しかありません。そして専門家が後見人になった場合は、もちろん無料ではありません。毎月、専門家に「報酬」を支払わなければならないのです。

以上のように、自宅を売却して、老人ホームに入居するまで、数多くの手続きと、様々な費用を負担する必要があるのです。

 

【お母さんが、もし認知症になってしまった場合】

では、お母さんが認知症になってしまった場合はどうでしょう。こちらも順番によっては、大きな問題が発生します。

お母さんが認知症になってしまっても、お父さんが元気であれば、お父さん名義の自宅は売却できます。この場合は、問題は発生しません。

しかし、お母さんが認知症を発症して判断能力に問題が生じるようになった後、お父さんが自宅を売却できないまま亡くなった場合はどうでしょう?お父さんが遺言書などを用意していなければ、お父さんの遺産は法定相続人であるお母さんと子どもでの話し合い(遺産分割協議)となります。しかし この場合、お母さんは判断能力に問題が生じていますので遺産分割協議ができません。ここでお母さんに「法定後見人」を立てる必要がでてくるのです。

法定後見人の手続きについては、上記のお父さんとケースと同じ流れになります。

さらに、法定後見人はお母さんの権利をきちんと請求しますので、預貯金などで調整ができなければ、お母さんの名義は自宅にも入ることになります。自宅に判断能力に問題が生じているお母さんの名義が入った場合、居住用財産の売却には家庭裁判所の許可が必要なのは上記のとおりです。

 

そこで、このような問題を解決する手段の一つが、「家族信託」です。

 

【家族信託の組成例】

委託者    : お父さん  

受託者    : 子  

受益者    : お父さん

信託財産    : 自宅(土地・建物)といくらかの金銭(固定資産税支払用)

信託開始要件 : 今から

信託終了要件  : お父さんの死亡まで

信託終了後の残余財産帰属権利者 : 子

 

この場合の家族信託は、上記のような組成となります。お父さんが元気なうちに、ご自宅を信託財産として法務局に登記をしておくのです。そうすれば、お父さんの判断能力に問題が生じた後も、受託者である子が自宅を売却し、お父さんの介護施設の費用に充てることが可能です。

また、お父さんが亡くなった際は、信託を終了させて、残った信託財産は子に帰属するとしておきます。そうすれば、遺言書の機能も持たせられます。もし、お母さんが認知症になって判断能力に問題が生じていても、信託財産については後見人を立てて遺産分割協議をする必要はないのです。

あるいは、お父さんが亡くなっても信託を終了させずに受益権がお母さんに移るようにしておき、お母さんが亡くなったときに信託を終了させて残余財産を子に帰属させるように組成することもできます。こうしておけば、お父さんが亡くなった後に受託者である子が自宅を売却して、お母さんの介護施設の費用に充てることが可能となります。

ちなみに信託しても、お父さんお母さんは元気でいる限り、大きく生活が変わることはありません。登記簿謄本をとらない限り、信託したことは傍目からはまったくわかりません。変わることといえば、固定資産税の納付書がお父さんではなく、子に届くようになるくらい。面倒な諸手続きも比較的、少ないケースと言えます。

 

その他、様々な形の家族信託があります

家族信託は、その他にもさまざまな活用法が見出されています。今後のメルマガにも、ぜひご期待ください。具体的に「家族信託」や「遺言書」などについて相談されたい方は、事前予約制にて承っております。お気軽にお問い合わせください。 

筆者紹介

高橋 大貴
福岡相続サポートセンター
相続コーディネーター

世の中に生命保険を売る人はたくさんいますが、「相続や不動産にも生保にもくわしい人」は、じつはあまり多くありません。
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