【No730】令和2年分の路線価等の補正について
国税庁より今年7月1日に発表された令和2年分の路線価及び評価倍率については、新型コロナウイルス感染症の影響で大幅な地価の下落が見られる場合には、補正が行われることとされていましたが、国税庁は大幅な地価の下落は見られなかったとして、令和2年1月から6月までの相続税及び贈与税の課税においてはこれらの補正を行わないことを10月28日に発表しました。
なお、令和2年7月から12月までの課税時期における評価においては、改めて今後の地価動向の状況を踏まえて判断されることとなりました。
1.路線価とは
路線価とは、相続税や贈与税の申告のための財産評価を行う際の便宜及び課税の公平を図る観点から、国税庁が公表する土地の価格がおおむね同一と認められる一連の土地が面している路線ごとに評価した1㎡当たりの価額をいいます。
路線価は、1月1日を評価時点として、1年間の地価変動などを考慮し、地価公示価格等を基にした価格(時価)の80%程度を目途に評価し、毎年7月1日に国税庁より公表されます。
今年は、評価時点後において新型コロナウイルス感染症の蔓延により緊急事態宣言が出され、その解除後も外出自粛要請などが続き、景気動向にも大きな影響を及ぼしました。そのため、国税庁は路線価等の公開に際して、「今後、国土交通省が発表する都道府県地価調査(7月1日時点の地価を例年9月頃に公開)の状況などにより、広範な地域で大幅な地価下落が確認された場合などには、納税者の皆様の申告の便宜を図る方法を幅広く検討いたします。」との考えを公表していました。
2.国土交通省による都道府県地価調査
国土交通省より発表された都道府県地価調査によると、令和元年7月以降1年間の地価について、全国平均では、全用途平均は0.6%の下落、また、令和2年1月以降の半年間(地価公示との共通地点)の全国平均の地価変動率は、住宅地は0.4%の下落、商業地は1.4%の下落とされています。
3.令和2年1月から6月までの財産評価における路線価等の補正
国税庁の発表では、上記の調査結果に加えて、国税庁が外部専門家に委託して行った調査でも、1月から6月までの間に、相続等により取得した土地等の路線価等が時価を上回る(大幅な地価下落)状況は確認できなかったとしています。全国約1900か所の地価を調べた結果、1月からの半年間で地価が15%以上下落したのは6か所にとどまり、最も下落したのは名古屋市中区錦3丁目や大阪市中央区宗右衛門町の19%であったとのことです。路線価は時価の80%程度で設定されていることから、下落がこの範囲に収まっているため補正は必要ないと判断し、1月から6月までの相続、遺贈又は贈与については、路線価等の補正は行わないこととしました。
しかしながら、納税者の方が不動産鑑定士による鑑定評価額などに基づき、相続等により土地等を取得した時の時価により評価することもできることも改めて説明されており、インバウンドによる需要の落ち込みなどで、時価が路線価を下回るような現象が見られる場所などは鑑定評価による時価の算定も認められるとされています。なお、相続税等における不動産鑑定は収益還元法を採用することは認められていませんので、鑑定評価を依頼する際には注意が必要です。
なお、令和2年7月から12月まで(7月から12月までの相続等適用分)に、広範な地域で大幅な地価下落が確認された場合の路線価等を補正するなどの対応については、今後の地価動向の状況を踏まえて、後日、改めて補正の要否について公表されることとなっています。
(担当:水品 志麻)