【No751】不動産所得の確定申告における注意点 ①収入金額について

 令和2年分の所得税の確定申告期限は4月15日に延長されています。既に申告が完了した方、これから作成する方、様々かと思いますが、改めて不動産所得の申告において注意して頂きたいポイントを解説します。

1.総収入金額として計上すべき金額

 不動産所得を構成する収入としては、土地建物等の貸付けから生じる賃貸料収入が一般的に考えられますが、このほかにも、次のようなものも含まれます。

 電力会社から受領する電柱敷地料など、毎年、発生するものでないため、収入金額の計上漏れに注意する必要があります。

イ.名義書換料、承諾料、更新料又は頭金などの名目で受領するもの

ロ.敷金や保証金などのうち、返還を要しないもの

ハ.共益費などの名目で受け取る電気代、水道代や掃除代など

2.収入の計上時期

 不動産等の賃貸料については、原則として契約や慣習などにより支払日が定められているものについては、その定められた支払日に収入計上します。(ただし例外として、継続的な記帳に基づいて前受収益・未収収益の経理を行っている場合には、その年中の貸付期間に対応する金額を計上することができます。)

 また、不動産等を賃貸することにより一時に受け取る礼金や権利金は、貸し付ける資産の引渡しを必要とするものは引渡しのあった日、引渡しを必要としないものについては、契約の効力発生日に収入計上します。

 なお、敷金や保証金については、本来預り金ですので受け取っても収入にはなりませんが、返還を要しないものについては、返還を要しないことが確定した日にその金額を収入計上する必要があります。

(1)賃貸料の収入計上時期

①当月分を前月末までに支払う旨の賃貸借契約がある場合

 この契約内容の場合、令和2年分に受領すべき賃貸料は、令和2年2月分(令和2年1月末受領)~令和3年1月分(令和2年12月末受領)ということになり、当該期間の賃貸料を収入金額に計上することとなります。

 年の途中に相続などがあった場合、日割りをして賃貸料を按分して申告しているケースを目にしますが、相続の開始の日までに受領すべき賃貸料は被相続人で計上し、同日以後に受領すべき賃貸料を相続人で計上することとなり、1月の賃貸料を日割計算する必要はありません。

(例)令和2年3月15日に相続があった場合

 令和2年3月分(令和2年2月末受領)までを被相続人で計上し、令和2年4月分から相続人で計上することとなります。

②当年分を当年末までに支払う慣習である場合

 借地人から受領する地代などは契約書がない場合もありますが、当年分を当年末に支払うという慣習に基づき支払が行われている場合には、その慣習にしたがい、令和2年分の地代を令和2年分の収入金額とすればよいこととなります。

 この場合も年の途中に相続があった場合でも、賃貸料を日割計算する必要はなく、例えば、12月20日に相続が発生していたとしても、受領すべき12月31日の所有者として相続人で収入金額に計上すればよいということになります。

(2)敷金・保証金の返還不要部分の金額

①契約時点で返還不要が確定する金額がある場合

 敷金・保証金を預かっただけでは収入にはなりませんが、賃貸借契約において、解約時において一定の割合を控除のうえで返還すると定められている場合には、その返還を要しない部分については、物件の引き渡しがあった日において収入金額に計上することとなります。解約時に控除するとの文言であるために、解約時に計上すればよいと誤解しがちですが、返還を要しないことが確定した日で収入金額に計上する必要があります。

②一定期間経過後に返還不要が確定する金額がある場合

 敷金・保証金を契約の経過年数に応じて、解約控除の割合が異なる場合には、返還を要しないことが確定した日でその返還不要部分の金額を収入金額に計上することとなります。

(例)賃貸開始から1年以内に解約した場合には解約控除しない場合

 ・・・1年経過後に収入に計上することとなります。

   賃貸開始から10年超で解約した場合には解約控除しない場合

 ・・・10年以内に解約した場合において、その解約時に収入に計上することとなります。

3.生計一親族から受領した賃貸料

 生計一親族に支払う地代・家賃などは、支払った者の必要経費とはならず、受け取った者の収入としても計上しないこととなりますが、例えば、父が所有している建物を生計一の長男が事業のために店舗として使用していた場合で、長男から父へ家賃の支払いがあったときでも、その家賃は父の収入金額に計上する必要がありません。その代わり、長男もその家賃は必要経費となりませんが、その土地・建物に係る固定資産税や建物の減価償却費は、長男の事業所得の必要経費に算入されることができます。

4.滞納や供託があった賃貸料

 不動産賃貸料の収入すべき時期は、原則として、契約又は慣習によって支払日が定められているものについてはその支払日とされています。したがって、支払うべき賃貸料が借主側の事情で遅滞している場合であっても、収入すべき賃貸料を収入金額として計上しなければなりません。

 また、賃借人との間で賃貸料について係争中である場合において、賃借人が賃貸料を供託してきた場合であっても、賃貸人はその賃貸料を収入金額に計上する必要があります。

5.売電収入

 賃貸アパートに太陽光発電設備を設置し、これにより発電した電力をその賃貸アパートの共用部で使用し、その余剰電力を電力会社に売却して得た場合におけるその売却収入は、不動産取得に係る収入金額となります。これは、賃貸アパートの共用部分で使用する電気料金が減少し、不動産所得の金額について影響と考えられるためです。

 しかし、賃貸不動産に設置した太陽光発電設備であっても、全量売電を行っている売電収入は、それが事業として行われている場合を除き、雑所得に該当します。

 また、自宅に太陽光設備を設置し、その余剰電力による売却収入を得ている場合も同様です。

6.未分割遺産から生じる収入

 相続財産について、遺産分割協議が確定していない場合、その相続財産は各共同相続人の共有財産と解され、その相続財産から生ずる所得は、各共同相続人にその相続分に応じて帰属するものとなります。

 したがって、遺産分割協議が調わないため、共同相続人のうちの特定の人がその収益を管理しているような場合であっても、遺産分割が確定するまでは、共同相続人がその法定相続分に応じて申告することとなります。

 なお、遺産分割協議が調い、分割が確定した場合であっても、その効果は未分割期間中の所得の帰属に影響を及ぼすものではありませんので、過去の申告について更正の請求や修正申告を行うことができないこととされています。

(文責:税理士法人FP総合研究所)