【No758】令和3年 公示価格発表
令和3年3月23日に国土交通省より令和3年地価公示が発表されました。地価公示とは、地価公示法に基づき毎年1月1日時点の地価(「正常な価格」)を、住宅地・宅地見込地・商業地・準工業地・工業地・市街化調整区域内宅地などの地域に分け、不動産鑑定士等が評価し国土交通省が3月末頃に公表するものであり、一般の土地の取引価格に対して指標を与えるとともに、公共事業用地の取引価格の算定等の規準とすることを目的に行われています。令和3年の標準地の設定数は、市街化区域20,559点、市街化調整区域1,381地点、その他の都市計画区域4,042地点、都市計画区域外の公示区域18地点の計26,000地点となっています。
<令和3年公示価格の動向>
令和2年から令和3年の公示価格を前年と比較した変動率は以下のとおりです。
都道府県地価調査との共通地点における半年ごとの地価変動率の推移は以下のとおりです。
【全国平均】
全国平均では、全用途平均は平成27年以来6年ぶりに下落に転じています。
用途別では、住宅地においては平成25年以来8年ぶりの下落、商業地においても平成26年以来7年ぶりの下落となりました。なお、工業地については5年連続の上昇となりますが、上昇率については縮小しています。
令和2年については新型コロナウイルス感染症の影響により全体的に弱含みとなっていますが、地価動向の変化の程度は用途や地域によって異なるものとなり、昨年からの変化は、用途別では商業地が住宅地より大きく、地域別では三大都市圏が地方圏より大きい変化となりました。
なお、この1年の地価動向を都道府県地価調査との共通地点における半年ごとの地価変動率で見ると、住宅地、商業地とも、前半(R2.1.1~R2.7.1)は、緊急事態宣言により全国的に経済活動が停滞した影響から、地方四市の住宅地・商業地を除き下落となっていますが、後半(R2.7.1~R3.1.1)は、景気の持ち直しの動きが広がり、取引も回復したことを背景に、大阪圏の商業地を除き横ばい又は若干の上昇となっています。ただし、後半も下落の地点数が上昇の地点数より多く、また、例えば東京都23区の商業地の後半の平均変動率が下落となるなど地域や地点による差があること、さらに、共通地点は比較的需要が堅調であった各地域の優良な住宅地やオフィス需要が中心となる商業地が含まれる割合が高いことに留意する必要があります。
【三大都市圏平均】
三大都市圏平均でみると、全用途平均・住宅地・商業地はいずれも、平成25年以来8年ぶりに下落となり、工業地は7年連続の上昇となりますが上昇率が縮小しています。
住宅地については、東京圏で平成25年以来8年ぶり、大阪圏で平成26年以来7年ぶり、名古屋圏で平成24年以来9年ぶりに下落に転じることとなりました。
また、商業地についても、三大都市圏すべてで平成25年以来8年ぶりの下落に転じることとなりました。
【地方圏平均】
地方圏平均をみると、全用途平均・商業地は平成29年以来4年ぶりに、住宅地は平成30年以来3年ぶりに下落に転じ、工業地は4年連続の上昇であるが上昇率が縮小しています。地方圏のうち地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)では全ての用途で上昇が継続し8年連続の上昇でありますが上昇率については縮小しています。
地方四市を除くその他の地域においては、工業地を除き下落に転じており、商業地が平成30年以来3年ぶり、住宅地は平成31年以来2年ぶりの下落となります。なお、工業地は3年連続の上昇となっていますが上昇率については縮小しています。
【概括と今後の展望】
令和3年の地価公示は、新型コロナウイルス感染症の影響により全体的に地価が減少する結果となっていますが、半年間の地価変動率の推移でみると、一部を除いて横ばい又は僅かながら上昇していることか確認できます。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響が解消されたとはいえない状況ではあるため、今後のコロナ情勢の変化により地価にも影響が及ぶ可能性が考えられます。地価公示は、相続税や固定資産税等の評価額に広く影響を及ぼすことから、今後も継続して動向を注視する必要がありそうです。
(文責:税理士法人FP総合研究所)