【No761】新型コロナウイルスによる国税の申告期限の個別延長手続方法の変更

 令和3年4月6日に国税庁は、「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」を更新し、その中で申告期限の延長手続について、これまで認められていた簡易な方法の取扱いは終了することとし、令和3年4月16日以降に個別延長を申請する場合には、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出しなければならないとすることを公表しました。

 この取扱いの変更により、個別延長においては、延長の理由を明らかにすることが求められることとなりました。新型コロナウイルスの感染は収束の目途が立たず、外出の自粛が求められている状況に変わりはありませんが、個別延長を申請する場合には、より具体的な状況を説明できるようにしておくことが求められることになりそうです。

1.期限までに申告等ができなかった場合の個別延長

 令和2年分の申告所得税、贈与税及び個人事業者の消費税については、本来の申告期限が延長され、令和3年4月15日までとされていますが、新型コロナウイルス感染症の影響により、延長後の期限までに申告・納付等することができないと認められるやむを得ない理由がある場合には、所轄税務署長に申請し、その承認を受けることにより、その理由がやんだ日から2か月以内の範囲で個別指定による期限延長が認められることとなります。

 個別延長をする場合において、これまでは、申告書の余白等に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と記載すればよいとされていましたが、令和3年4月16日以降においては、所轄税務署において、期限までに申告・納付等することができないやむを得ない理由を具体的に確認する必要があるため、個別の状況を記載した「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出しなければならないこととされました。

【「災害による申告、納付等の期限延長申請書」(申告所得税等)の記載方法】

(出典:国税庁FAQ 問1-3 個別指定による期限延長手続の具体的な方法)

2.個別指定による延長後の申告・納付期限

 個別指定による期限延長については、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」に基づき、個々の状況を確認した上で税務署長が申告・納付期限を指定することとなります。

 なお、申告書等と「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を同時に提出した場合には、その提出日が申告・納付期限となります。

3.申告所得税等以外の税目の個別延長

 法人税や相続税といったその他の税目についても、新型コロナウイルス感染症の影響により期限までに申告・納付等な場合には、個別指定による期限延長が認められます。

 なお、令和3年4月16日以後に個別指定による期限延長を申請する場合は、期限までに申告・納付等することができないやむを得ない理由を具体的に確認する必要があるため、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」の提出が必要とされます。

【「災害による申告、納付等の期限延長申請書」(法人税等)の記載方法】

(出典:国税庁FAQ 問1-5 個別指定による期限延長手続の具体的な方法)

 

【「災害による申告、納付等の期限延長申請書」(相続税)の記載方法】

(出典:国税庁FAQ 問1-5 個別指定による期限延長手続の具体的な方法)

4.期限の個別延長が認められるやむを得ない理由

 新型コロナウイルス感染症に関しては、これまでの災害時のように資産等への損害や帳簿書類等の滅失といった直接的な被害が生じていないものの、感染症の患者が把握された場合には濃厚接触者に対する外出自粛の要請等が行われるなど、自己の責めに帰さない理由により、その期限までに申告・納付等ができない場合も考えられます。

 そのため、これまでの災害時に認められていた理由のほか、例えば、次のような理由により、申告書や決算書類などの国税の申告・納付の手続に必要な書類等の作成が遅れ、その期限までに申告・納付等を行うことが困難な場合には、困難な理由がやんだ日から2か月以内の範囲で個別の申請による期限延長(個別延長)が認められることとされています。

〔個人・法人共通〕

①税務代理等を行う税理士(事務所の職員を含みます。)が感染症に感染したこと

②納税者や法人の役員、経理責任者などが、現在、外国に滞在しており、ビザが発給されない又はそのおそれがあるなど入出国に制限等があること

③次のような事情により、企業や個人事業者、税理士事務所などにおいて通常の業務体制が維持できない状況が生じたこと

*経理担当部署の社員が、感染症に感染した、又は感染症の患者に濃厚接触した事実がある場合など、当該部署を相当の期間、閉鎖しなければならなくなったこと

*学校の臨時休業の影響や、感染拡大防止のため企業が休暇取得の勧奨を行ったことで、経理担当部署の社員の多くが休暇を取得していること

*新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、生活の維持に必要な場合を除きみだりに自宅等から外出しないことが求められ、在宅勤務の体制も整備されていない等の 理由から、経理担当部署の社員の多くが業務に従事できないこと

〔個人〕

④納税者や経理担当の(青色)事業専従者が、感染症に感染した、又は感染症の患者に濃厚接触した事実があること

⑤次のような事情により、納税者が、保健所・医療機関・自治体等から外出自粛の要請を受けたこと

*感染症の患者に濃厚接触した疑いがある

*発熱の症状があるなど、感染症に感染した疑いがある

*基礎疾患があるなど、感染症に感染すると重症化するおそれがある

⑥新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、生活の維持に必要な場合を除きみだりに自宅等から外出しないことが要請されていること

〔法人〕

⑦感染症の拡大防止のため多数の株主を招集させないよう定時株主総会の開催時期を遅らせるといった緊急措置を講じたこと

(文責:税理士法人FP総合研究所)