朝晩が随分涼しくなり、秋の訪れを感じるようになって来ました。この夏、お子さんやお孫さんを連れて旅行された方も多いのではないでしょうか。車で高速を走り、普段なかなか見る事のない山や畑の緑を眺めるのも旅の楽しみの一つですね。
新鮮な空気を吸い込みながら、ふと頭に浮かびます。「あの山、相続したらどうなるのだろう・・・・。」
ということで、今回は山林の相続税評価についてお話したいと思います。
山林も不動産ですので、住宅と同じように路線価図や倍率表を使って評価をしていきます。下に掲載しているのが倍率表で、路線価図とともに国税庁のHPから誰でも見る事ができます。不動産の相続税評価を行なう上で、これらは欠かせない道具ですので、ぜひ一度見てみてください。
山林と一口に言っても、相続税評価をするに当たっては三種類に分けられます。山林はその特性により「純山林」、「中間山林」、「市街地山林」と分けられており、どれに該当するかは「倍率表」を見ると分かります。倍率表には省略して書かれていますので、「純」は「純山林」、「中」は「中間山林」、「市比準(または比準)」は「市街地山林」を指していることを覚えておくとよいでしょう。
山林は三種類に分けられますが、評価方法は以下の二通りです。
純山林・中間山林 ⇒ 倍率方式
市街地山林 ⇒ 宅地比準方式(宅地評価額?宅地造成費)
純山林と中間山林については倍率方式ですので、倍率表に書かれている倍率を固定資産税評価額に掛けることでもとめられます。
市街地山林は「宅地比準方式」を用いており、純山林や中間山林とは評価方法が異なります。「宅地比準方式」という言葉は、あまり聞き慣れないですが、簡単に言うと「この山林を宅地に造成したら、いったい評価額はいくらになるだろうか」という考え方です。したがって、「宅地評価額?宅地造成費」という計算式で評価額をもとめます。
宅地造成費については、都道府県ごとに定められている金額を使って算出することができます。金額については、路線価や倍率表と同じように国税庁のHPから見る事ができます。
それでは、山林の評価方法について、簡単に計算してみましょう。
1)市街地山林の場合
福岡県内にある100の山林で、固定資産税評価額が100万円。
宅地評価が固定資産税評価額の1.1倍の地域で、傾斜度5度の傾斜地であると仮定します。
(福岡県の場合、傾斜度5度の土地の造成費は1?当たり8,400円)
宅地評価額:100万円×1.1=110万円
宅地造成費(福岡県):8400円/ ×100=84万円
相続税評価額:110万円-84万円=26万円
2)純山林の場合
100の山林で固定資産税評価額が100万円、倍率3.3の地域だと仮定します。
相続税評価額:100万円×3.3=330万円
田舎にある山林は都会にある宅地や山林ほど固定資産税評価額が高くはないですから、ちょっとした山林を所有しているくらいでは相続税に苦しむことは少ないでしょう。しかし、何十ヘクタールもあるような広大な山林を持っていれば、当然評価額が跳ね上がります。
意識的に相続税対策を行なうこともなく、「寝耳に水」という感じで山林を相続することになった相続人が、相続税を払えずに山林を手放すということも少なくないようです。